ヴァンパイア†KISS
一瞬、太陽のような眩しい陽光がダンスホール中に煌いた。

眩しくて思わず瞳を閉じたわたしが再び瞳を開いたその時。

目の前でシエルに降り注ぐように、黒の糸の切れ端が舞い降りていた。

粉々に粉砕されたような蜘蛛の巣の切れ端がゆっくりと落ちていく。

「君はちょっと一味違うヴァンパイアのようね」

サラが妖しく微笑む。

シエルは右の手首を見下ろしながら、不思議そうに首をかしげた。

「あっれ~、おかしいな。手首だけはずれてないや。君、しぶといね」

サラに向かって天使のように微笑むシエル。

シエルの右手首には、サラの右手から伸びている蜘蛛の巣が巻きついていた。

腕と腕が糸で繋がっている状態のサラとシエル。

「わたし、キスがしたい男性は絶対に逃さないの」

「へぇ~、光栄だね」

シエルは両腕を頭の後ろで組んで楽しそうに微笑んだ。

「サラ!こんなことやめて!みんなを傷つけないで、お願い」

サラはわたしに向き直る。

「カレン、わたしはヴァンパイアになれてよかったと思っているわ。だってこんなにキスのうまい種族はほかにいないもの。ヴァンパイアにしてくれたオズワルド様の命令ならわたしはどんなことでもする。悪いわね、カレン」

「…サラ…!」

そう言うとサラは、わたしの後ろに悩ましげな視線を送った。

「…さっきから気になっていたのだけど、そこの男性、ずいぶんセクシーな唇をしているわね。……たまらなく欲しいわ」

「サ、サラ!?」

わたしの後ろに立つデュオに色目遣いで微笑むサラ。

その瞬間、デュオはわたしを後ろから抱きしめて大きな手でわたしの顔をデュオの顔に触れるほど近づけながら言った。

「悪いが、私は好きでもない女にキスの安売りはしない」

そう言ってわたしの髪をつかみその上にキスをする。


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