ヴァンパイア†KISS
「……デュ、デュオ!?」

わたし、相変わらず真っ赤だ。

何度こういう場面を経験しても慣れないや……。

サラはつまらなそうな顔をして、シエルに向き直った。

「カレンの恋人か。それじゃあ、そこのセクシーな彼はひとまず置いといて、こちらを先にいただくとするわ」

シエルは相変わらず頭の後ろで腕を組みながらのん気な様子で立っていた。

いや、少しふて腐れた顔にも見えるけど……。

「なぁんだ、結局、デュオ兄さんか。じゃぁ、僕本気だしちゃうよ?」

無邪気に微笑むシエルにそこはかとない恐怖を感じたわたしは叫んだ。

「シエル、サラはわたしの親友なの!傷つけないで!」

「わかってるよ、姉さん」

子供のように振り返ってひらひらと手を振るシエル。

その瞬間、サラは蜘蛛の糸を引き寄せるように、手を振っていたシエルの手首を思い切り引っ張った。

シエルの体が宙を舞い、グンとサラに引き寄せられる。

シエルは宙に浮きながら、まだわたしを見つめ糸のついていないほうの手を振っていた。

シ、シエル~、なにやってんのよぉ~!

そう思った瞬間。

シエルの表情がガラリと変わる。

目を細め、きゅっと唇を結んだシエルは後ろ宙返りをすると、そのままダンっと床に両足で着地した。

息もつかせぬ速さで糸を引き、今度はサラを空高く宙に浮かせる。

「きゃあああ~!」

サラは悲鳴を上げながら天井から吊るされているボール状の照明に引っかかり、そのままブラリと右手から垂れ下がった。

「サラ!!」

サラは悔しげに舌打ちをすると、左手の長い爪で右手に巻きつけていた蜘蛛の糸を切り離した。

地上へと降りてくるサラ。

シエルに巻きついた糸も切り離されたところから、光を撒き散らしながら跡形もなく消えていった。





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