ヴァンパイア†KISS
3メートルほどの距離で対峙する二人。

その時、二人から少し離れた距離で倒れていたブルースがうめき声をあげた。

「…うぅ…く、るし…い」

「ブルース、大丈夫!?」

駆け寄ろうとして気付いた。

さっきまでブルースの傍にいたヴァンパイアの男がいない。

どこにも、見当たらないって一体!?

シュン…という風を切る音。

「ふふ…その男は風のように素早いの。気をつけて……シエル」

サラがほくそ笑むその視線の先に、男に後ろから羽交い絞めにされたシエルがいた。

シエルは無表情で抵抗もせず立っていた。

「シエル!!」

サラはゆっくりとシエルに近づきながら、ドレスのポケットから小さなガラスの瓶を取り出した。

「これはね、キスの毒から逃れる解毒剤よ。わたしのルージュには特殊な毒が入っているの。それは瞬く間に心臓に達し、ヴァンパイアと言えども命の保証はないわ。そこの男も時間の問題ね」

ブルースを振り返り微笑む。

「この解毒剤が欲しいでしょう?…でも、残念ね。あげられないわ」

サラはシエルの前に立つと、小瓶を真っ直ぐに頭上に飛ばした。

「解毒剤が!!」

そして毒の塗られたその唇が牙を零れさせ、シエルの唇に近づく。

「シエル――――!!!」



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