ヴァンパイア†KISS
螺旋階段を息を整える間も惜しんで駆け上がっていく。

急いで……急いで……!

ウルフが、エマが、そこで待っているのを肌で感じていた。

お願い。

100年ぶりに再会できる二人を……殺さないで!!

徐々に屋上へのドアが見えてくる。

ウルフは、エマは…?

不安が最高潮に高まったその時。

――――デュオが運命の扉を開いた…………!!



春には似つかわしくない強い風が吹き付ける。

金色に輝く半月。

ヴァンパイアたちの始祖がこの世に生を受けたその時から浮かんでいただろう月は、今、何を思いわたしたちを見下ろしているのだろう。

闇に、シエルの金色の髪がなびいていた。

「…母さん……」

隣に立つシエルを見た瞬間、わたしは自分の目を疑った。

……涙!?

シエルの頬に、キラキラ輝く雫が一瞬流れていった気がした。

ヴァンパイアは、涙を流せない。

なのに、なぜ……?

「……ジャスト1時間。ようこそ、月夜のショーへ。まずは、美しいヴァンパイアの血のワインなど、どうかな?……くっく…」

10メートルほど先に。

その禍々しいヴァンパイアはいた。

オズワルドはさっきまで吸血していたかのごとき血を垂らした唇を開き微笑んだ。

「残酷なほどに美しい…エマの血を」

エマの血が入っているのだろうワイングラスを十字架に括り付けられ意識を失っているエマに向けて掲げる。

エマの真っ白な首から流れるおびただしい血。

………エマ……!!


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