ヴァンパイア†KISS

太陽と月

ウルフが解き放たれた瞬間。

優しく強いヴァンパイアのオーラを感じた。

とても、とても………心が震えるようなオーラ……!

理事長が棺おけの中のウルフを外へ引きずり出す。

彼の腕に巻きついていた月光の鎖はシエルによって既に解かれていた。

引きずり出されて初めて見えたウルフの姿。

銀色の腰まである長い髪。

白く透けるような肌に、固く閉じられた瞳。

均整のとれたその美しい顔。

夢の中で見たウルフと同じ……。

その美しさは全く変わっていないのに……!

理事長は引きずり出したウルフの首に何か刃物のような物を近づける。

「父さん!」

シエルが駆け寄ろうとしたその時、闇の中で声がした。

「動くな!母を殺されたいか?」

オズワルドが意識のないエマの心臓に剣を突き立てる。

「…ぐっ…」

シエルが悔しそうに握りこぶしを作り、立ち止まった。

理事長は刃物でウルフの首にスっと傷をつけると、流れる血を赤い液の入った細長い試験管のようなガラス瓶に入れていく。

そしてオズワルドに歩み寄りその瓶を手渡した。

「エマの血にウルフの血を混ぜたもの。これで、2人の生きた血が手に入った……。このヴァンパイアの王が、『ガイア』を復活させる時が来たのだ!!」

オズワルドが高らかに笑うその間。

わたしは、手を伸ばせば届きそうなほど傍にいるエマとウルフを見ていた。

意識のない二人は固く瞳を閉じ、お互いの姿を見ることはできない。

二人はこんなに…………傍にいるのに!!







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