ヴァンパイア†KISS
「行って、シエル!!はやく、ウルフを!!」

わたしの叫びにシエルは悔しげに眉をしかめながら、クイっと前を向くとウルフのもとへ走った。

わたしは剣を突きつけられながら、シエルがウルフを抱き起こすのを見ていた。

100年間まだ出会ったことのない親子。

わたしは涙を浮かべながらその光景を見つめる。

ウルフは抱き起こされ美しい銀髪を流れるようにサラサラと落としながら、眠るようにシエルに抱かれていた。

「……父さん…僕だよ、シエルだ。母さんのお腹の中で、僕はずっと父さんの夢を見ていた。父さん、あなたは僕が想像していた通りのヴァンパイアだよ。父さんのオーラは強くて、美しい。父さん……父さんの笑顔…僕にも見せてよ…父さん…!」

月が二人を暖かに照らす。

シエルの額にバイオレットの三日月が煌々と輝き出した。

ポツリ…とシエルの瞳から涙が伝い落ち、

それはゆっくりと、ウルフの白い頬を静かに流れ落ちていく。

肩を震わせ泣くシエルがとても小さく見えた。

姿は大人でも、彼はこの世に生を受けてまだ間もないのだから。

シエルの涙で濡れたウルフの頬がピクリと動いたのはその時だった。

「…父さ…ん…?」

頬が動き、次にまぶたが微かに震える。

ウルフのバイオレットの瞳が……………



――――――100年の時を経て、今、開かれた………。











< 335 / 411 >

この作品をシェア

pagetop