ヴァンパイア†KISS

気高い血

シエルは怒りに肩を震わせながら立ち上がった。

怒りながらバイオレットの瞳から涙を流すシエルは、美しかった。

怒っている顔が美しいなんてそんなの不謹慎だけど、シエルにはそれがある。

たぶん、シエルの怒りには、自分のための感情が微塵もないから。

彼は今、純粋に父と母のためだけにその感情を爆発させている。

シエルは全ての力を体から発散させるように、体中からバイオレットの光を放ち始めた。

静かに剣を構えるオズワルド。

じりじりと間合いを詰めるように、シエルは一歩一歩進む。

そして、足元に落ちていたデュオの剣を拾うシエル。

「オズワルド―――!」

シエルは叫ぶと同時に走り出した。

「…ぐわ…!」

突然、わたしを押さえていた理事長の苦しげな声が耳元で聞こえ、わたしは何かの衝撃で後ろの壁に叩きつけられた。

「……ぐ…!」

わたしは壁に寄りかかった状態で、打った頭を押さえながら目の前の状況を確認する。

そこには、うつ伏せに倒れている理事長のうめき声。

そして…………!

「…………!!」

「…手に……入れ…た。ウルフの……血………」

理事長が持っていたウルフとエマの血が入ったガラス瓶を持った男。

男はヴァンパイアすら嫌悪するだろう醜悪な笑みを浮かべた。

………ユーゴ!!!

ユーゴはわたしには目もくれず、剣を交えているシエルとオズワルドのもとへと走り出した。

「あ……待って…それを返して!!」

……ドクン……!!

急激に自分の鼓動が大きくなった。

「…は…ぁ……」

激しい眩暈。

乱れる呼吸。

まさか………まさか!!

こんな時に……………!!








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