ヴァンパイア†KISS
「父さんと母さんが…!」

そう言ったきり、シエルは黙った。

うつむき、首にかかっている金色の十字架を握る。

十字架………これはシエルがカルロにあげた十字架だ。

「シエル、それたしかカルロが…」

そう言うとシエルは思い出したように顔を上げわたしを見た。

「ああ、これはあの炎の中で、カルロが倒れている僕にかけてくれたみたいだ。……カルロの形見になってしまったね」

自嘲気味に微笑むシエルの肩をそっと抱いた。

「シエル、二人を止められないかな?」

「…父さんは強い。カルロのおかげで心臓も治ったし、そう簡単にはやられないだろう。僕も今すぐに駆けつけたい気持ちはある。でもカレン、今はだめだ」

「……どうして?」

シエルは窓の外の月を見上げる。

「…明日は満月。もしかしたら、デュオ兄さんを助けられる最後のチャンスかもしれない」

デュオを助けられる最後のチャンス……!?

「…ど…いうこ…と?ね…シエル!!」

シエルは立ち上がり、わたしの頬にそっと触れた。

「感じるんだ。デュオ兄さんのヴァンパイアパワーが確実に弱まっているのを。この分じゃ、あと2週間もたないだろう。その前に、心臓の傷を治さなければならない。それには、月の力を加えた強いエナジーが必要だ」

「月の力の強いエナジー?」

「そう、それも愛する人の強いエクスタシーの入った、ね」

シエルの瞳がバイオレットに揺らめく。

その瞳を細めると、彼は指でそっとわたしの唇に触れた。

「カレンが僕と寝てそのエクスタシーを高める。そして、月の力を得たカレンが満月の夜にデュオ兄さんにキスをすれば、兄さんは目覚めるだろう」

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