ヴァンパイア†KISS
きょとんとした顔でわたしを見つめるブルースにデュオが訝しげに問いかけた。

「ブルース、どうした?気でも違ったか?」

「何言ってるんですか、デュオ様!僕は正常ですよ!デュオ様がめずらしくルシア様ではなくて他の女性を連れていらっしゃったので驚いただけです」

ブルースは平然とした顔でデュオとわたしを交互に見つめる。

「ブルース、どういうことだ?カレンがわからないとでも言うのか?」

その瞬間。

「おお!」という歓声がホール中に響き渡った。

ダンスホールの中央を開け放つように、みるみるうちに端に流れていくカップル達。

その中心に、誰よりも軽やかに優雅にステップを踏む二人の男女がいた。

「………ウルフ……エマ……!!!」

白のドレスを身にまとった小鳥のようなエマと、太陽のような微笑を浮かべ軽やかにステップを踏むウルフ。

ウルフとエマ。

二人の100年ぶりのワルツ。

ほんとうに、誰よりも心軽やかに、空に舞い上がるように、愛を歌う心が聴こえるワルツ。

吸い込まれるように見つめていたその時。

突然、ワルツの軽やかなミュージックがプツリ、と途絶えた。

全員の視線が、わたしたちがいる入り口の反対側の扉へと注がれる。

ゆっくりと開け放たれる扉。

その人物を見て、あちこちで畏怖と尊敬の入り混じった声が飛び交った。

「……ユーゴ様、ユーゴ様だ!!」

………ユーゴ!!!


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