ヴァンパイア†KISS
「…いいだろう。デュオ、見せてみろ。この父にお前のタンゴを」

ユーゴは挑戦的な鋭い視線を差し向けると、合図をするようにパチンと指を鳴らした。

その瞬間、かかっていたタンゴ曲が鳴り止み、辺りは凪いだ海のようにしんとなった。

ユーゴはそのまま後ずさり反対側の壁に腕を組みながらもたれかかると、こちらを凝視した。

ヴァンパイアたちもそれを見てさらに場所を空けるように後ろへ後ずさる。

ウルフも小さく微笑むと、右手でホールの中央に来るように指し示しそのままスっと後ろへ下がった。

「…デュオ」

不安でいっぱいなわたしの手をデュオがぎゅっと握り、ホールの中央へと歩き出す。

歩きながら、興味や好奇心でいっぱいのヴァンパイアたちの視線を強く感じる。

…これで失敗したら、彼らはますますユーゴを王と崇めるだろう。

それだけは、絶対に避けなければいけない…!!

「カレン、何も考えるな」

中央へと躍り出たデュオが立ち止まり、わたしを振り返る。

憂いを含んだ、その瞳。

「ただ、感じていろ」

強気に笑う、その唇。

「私の……気が狂うほどのお前への愛を」



――――デュオ……………………!!!








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