ヴァンパイア†KISS
懐かしい教会の鐘の音が聴こえる。

100年ぶりに聴くその音に、耳を澄ます。

もうすぐだ。

なぜか、予感があった。

あの場所に、デュオがいる。

きっとそこでずっと、わたしを待っている。

会いたい想いが、歩く速度をどんどん速める。

教会の横にたどり着いた時、老女が二人、楽しげに話している声が聴こえてきた。

「ガイアの薬はほんとにすごいよ。不治の病も治ってこの通りさ。神藤って人はほんとにすごい人だったんだねぇ。銅像になるくらいにさ」

「知ってるよ。『カレン』て薬だろ?なんでもヴァンパイアの血を研究に使ったとかって噂だけど、ほんとかね?」

「さぁねえ。100年前まではヴァンパイアがこのロンドンにいたって話だけど、今はもう絶滅してしまったんじゃないのかい?」




ヴァンパイアは、この世界のどこかにいる。




夜に潜み、夜が訪れるたびに、ワルツを踊り、恋人を慈しむ。




彼らの血と愛は、この世のどんな生命よりも濃く、甘美だ。




彼らが消える時、それはこの世から、




―――――「永遠の甘美」が消える時。










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