ヴァンパイア†KISS
「さぁ、今日は仮面舞踏会じゃないから、存分に殿方の顔を堪能できるわね~!」

サラはさもウキウキしたような声でそう言うと、

「あ!クリスだわ!モデル仲間なんだけど、今狙ってるのよねぇ。あの色っぽい唇がわたしを誘うのよ~!」と、モデルたちが集まっているらしい一角に向けて歩き出した。

「カレン、ちょっと行って来るね!あとで黒髪の青年を連れてくるから、待っててねん」

ちょっと遠くからそう叫ぶと、クリスというモデルの男性に駆け寄っていきさっそく話しかける。

「サラのああいう行動派なところはほんと尊敬しちゃう」

わたしは今まで好きな人にも積極的に行動したことがなかったから、なんだかサラがとても羨ましく思えた。

そして一歩また一歩とホールの中央へと足を踏み入れる。

この中にデュオがいるかもしれない……。

そう思うとどうしても気持ちがはやって歩く速度がどんどんと加速していた。

デュオ………どこ……?



突然、人の波が押し寄せてくる感覚に襲われた。

な……に?

まただ。

あの仮面舞踏会の夜と同じ。

人の群れが、怖い。

なんだかみんな笑ってるのに、ほんとは違う仮面の下の怖ろしい顔を隠し持っている気がして。

あの夜と同じく。

わたしはむせ返るような気持ちの悪さに、その場に座り込んでいた。



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