ヴァンパイア†KISS
そんなことを考えていると、ぶるっと寒気がして、冷たいテラスに座り込んでいた自分に気づいた。

立ち上がってホールの入り口に再び入る。

でも人の波が怖いわたしは壁際で立ち尽くしていた。

その時。

「おお……」

「ほぉ…!」

ため息をつくような感嘆の声がホール中に響き渡った。

その全員の視線がホールの中央に注がれていることに気づき、目を凝らしてみんなの視線の先を探る。

それは……デュオとルシアだった。

優雅で軽やかなワルツのステップに全員が酔いしれていた。

ダンスだけじゃない。

二人はこの広いホール全体をバラの香りで埋め尽くすような甘美なオーラをその表情、ステップ、雰囲気から醸し出していた。

「どこのご子息とご令嬢かしらね」

「素晴らしい!素晴らしく美しい!」

周りでざわめく声があちこちで聞こえる。

わたしは、ただデュオだけを目で追っていた。

ルシアに注がれているデュオの艶っぽい視線。

彼女の腰を抱く手。

吐息が届きそうな二人の距離。

わたしはその全てに…………嫉妬した。


デュオ、こんなにあなたが愛しいなんて―――!!





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