君の隣。
私が退院してから早2週間が経った。
今日は、ソウに会える日。
あの日、私たちはまたここで会おうと約束した。その時に連絡先も交換して、毎日電話もしている。約束の日を決めてからというものの、毎日毎日、ドキドキしすぎて眠れなかった。あと何日だろうって、何度カレンダーを見たことか。
あと3日!わくわく!
明後日だ!ドキドキ!
明日だ!やばい!緊張する!
って、昨日も結局寝たのは12時を回っていた。
それでも朝は早く目覚めてしまって、とても眠い。少しベッドの上でごろごろしてから、ゆっくり体を起こして念入りに身支度をした。でもまぁこの“身支度”ってのは、部活に行くための身支度であって、ソウと会うためのものではない。それでもやっぱり気分が踊る。いつもは面倒くさいと一つに束ねてしまう髪の毛も、今日ばっかりは、編み込みで決めてみた。どうせ会いに行く前にやり直すのだけど。
待ち合わせは、午後5時。
現在時刻は午後4時30分。
部活から帰ってきて、さっとシャワーを浴びて、
リビングでお茶を飲む。公園までここからはバスで20分ほど。バスの時間もあるので、あと5分もしたら家を出なくてはいけない。
「陽夏?どこか行くの?」
洗濯物をたくさん担いでお母さんが2階から降りてくる。洗濯物を取り込んできたのだろう。
「うん、ちょっとね。」
「どこの誰と?何時に帰ってくるの?」
お母さんは、私がどこかへ行くというと必ずこう聞いてくる。誰と遊ぶかなんて名前言ったところでわからないだろうし、今時携帯で「今から帰るね!」と送れば済むはずなのに。
「ソウくんって子。病院で仲良くなったの。」
「病院で?その子、何か病気なの?」
「あー、彼は盲目だよ。」
「...行かなくていいわ。」
...は?
なにそれどういうこと...
「盲目の子と...それもこんな遅い時間に会うなんてありえないわ!今後一切、その子と会わない方が陽夏の為になる!」
結局その日待ち合わせ場所に向かうこともできなくて、しかもそれから5日間ほど、携帯は没収されて、遊びにも行かせてもらえなかった。
ねぇソウ、会いたいよ。