君の隣。
「...うん。
たしかに可愛いね。
きっと、とても綺麗なんだろうなぁ。」
もっと意味がわからなくなった。
そして、聞いてみた。
「それは、どういう意味?」
「...ずっと黙っていてごめん。僕の目は、もう何も見えていないんだ 。」
私は一瞬フリーズした。
たしかに、ソウが私と目を合わせることは今まで一度もなかった。いつも目を伏せ、優しく微笑んで会話を返してくるのだ。
「だから僕は、陽夏といろんなところに行くどころか、ここから一人で動くこともできない。ただただ風を感じて、季節を感じて、誰かの話し声や気配を感じて、暗闇の中1人じゃないことを確認する毎日。でも陽夏と出会ってそれは変わったんだよ。毎日に刺激があって、久しぶりに楽しいと思った。本当にありがとう。...さようなら。」
とても悲しそうに見えた。
私は思わず抱きしめてしまった。
「それなら...、それなら私がエスコートするよ。私はまだもっと、君の、ソウの隣にいたい。ソウはどうなのか、正直に教えてほしい。細かい事情なんて見て見ぬ振りをするから気にしなくていい。
...もう一度だけ言うよ?
私と、付き合ってください。」
さぁっと暖かい風が流れる。
「...春が来たらしいね。
この世界にも、僕にも。
好きだよ、陽夏。
僕、陽夏のこともっと知りたい。
僕に、君の、陽夏の隣を頂戴」
私は、満面の笑みを浮かべた。
「うん...うん!
私の隣を、君にあげる。」
その瞬間、
君の、
美しいグレーの瞳が、
私をみた。