君の隣。
その日、僕はヒナツに告白された。
僕はとても驚いた顔をしていたと思う。
だってこんなのドラマやマンガや、小説でしか見たことない。
「どう、かな。
無理なら無理で、きっぱり断って欲しい。遠慮はいらないよ。弱みばかり見せてきた私の、最初で最後のカッコつけたけじめ。」
なんか、ヒナツらしいなと思った。
僕も、この気持ちが何か、気づいている。
きっと僕もヒナツと同じ気持ち。
でも..._______
「...ごめん。
それは、考えられない。
たとえ陽夏でも陽夏じゃなくても。」
その瞬間、ヒナツから漏れた声に、この断り方は良くなかったかと後悔を覚える。
「そ、っか。
こっちこそごめん。」
心が張り裂けそうだった。
たった数日の会話で、ここまで気持ちが膨れていたとは自分でもびっくりだ。
とはいえ、これには事情がある。
僕は、この事実をヒナツに伝えるべきなのだろうか。
君はまだ知らない。
僕の瞳が、君を捉えていないことを。
思い切って重い沈黙を破った。
「...ヒナツは以前、会話の中で、
『私、これでも結構モテるんだよ。学校のコンテストで入賞もしたんだ』って、言ったよね?」
「あぁ、言ったかも?」
「...もっとこっちにきて、顔に触れさせてもらっても?」
は...?
という素っ頓狂な声が聞こえた。
どうやら、君は相当驚いているんだろう。
そして僕を、
“さっきフったばっかりの女の子の顔に触れたいとかやば!何こいつ!”
とか思ってるんだろう。
でも僕はもう、君の顔に手を伸ばしていた。
君の表情(かお)を見せてくれない目を閉じて。