三つ子のヤクザと狼娘 巻ノ零
耳元で囁かれ、
心臓が跳ね上がる。
オーナーの手が、
俺の手に触れた。
「本当は未成年は
雇えないんだけどね、
あの子は特別。
17歳だけど、雇ってる」
オーナーが言うと同時に
リリー灰皿に煙草を置き、
立ち上がった。
客のサラリーマンに
何やら声をかけ、
そのまま店の奥へ姿を消す。
「奏太、あの子が気になるなら
話をしてみたらどうだ?
聞いた限りでは、
何か事情がありそうだし」
彼女の姿を目で追っていると
親父が声をかけてきた。
「親父はどうするんだよ」
「俺は、もう少しここで情報を探ってみるよ」
情報を探ると言っておいて、
どうせオーナーと
一緒にいたいだけだろう。