三つ子のヤクザと狼娘 巻ノ零


夜は3時まで仕事だから
私の生活は
学校とアルバイトと家の往復で
終わってしまう。

誰かと出かけたり
部活に所属する青春なんて
夢のまた夢だ。


家の玄関前に立つと
吐き気と頭痛がこみ上げてきた。

気のせいだということはわかっている。

だけど、そう
錯覚してしまうほど、

この家に精神的苦痛を
与えられてきたのだ。

正確には家ではなく
この家の住人に……だけど。

ドアの鍵穴に鍵を差しこみ、
ドアを開ける。

玄関に、赤のハイヒールが
脱ぎ散らかされていた。

その隣には、先のとがった
革靴も並んでいる。

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