三つ子のヤクザと狼娘 巻ノ零
「大丈夫だよ。
俺は亜衣以外の女は愛せないから。
それに亜衣だって、この事は知ってるよ」
それが本当か、よくわからない。
親父が嘘をつく可能性がないとは
言い切れないからだ。
でも、確かにこんなに帰りが
遅くなれば
あのクソババァのことだ、
しつこく電話してくるだろう。
俺は、薄暗い店内に設置された壁掛け時計に
眼を向けた。
それは、午後11時を示している。
あと1時間もすれば、日付が変わる。
――と、
「ちょっと、アンタねぇ!!」
突然、店内に甲高い声が響いた。
俺は思わず、声がした方を振り返った。