危険な愛に侵されて。



「ほら、傷が悪化するようなことすんじゃねぇよ」

そんな私に気づいた雪夜が、優しく注意してくるから調子が狂う。


「……痛くない」
「バカ、さっき安静にするつったのはお前だろ?」

「誘ってきたのは雪夜なくせに」


「別に抱くつもりはなかったけどな。結構ひどい怪我してんだし」

「嘘つき」


よくそんな嘘を平気でつけるものだ。
色気たっぷりに私を誘ってきたくせして。


「本気。俺はお前の反応が見たかっただけ」
「なっ……ふざけないで。この女たらし!」


薄笑いを浮かべ、私を見つめる雪夜はとても楽しそうだから余計に腹が立つ。


「もう本当かわいいのな。
そんなムキになって」

目を細め、頬を突っついてくる彼。


本当に恥ずかしい。
顔が熱くなって、思わず顔を背ける。


「案外慣れてねぇんだな」
「……純粋な関係を持ったことがないもので」


いつも体の関係ばかりで。
こうやって迫られることに慣れていない。

もうお互いの本性がわかっている今、演技する必要もないため“素の自分”はされるがままの状態。

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