危険な愛に侵されて。



ぎゅっと私の手を握り、何度かまぶたをピクピクさせた雪夜はまた寝言を言う。


「───怖い」



目を見張り、じっと彼から目を離せなくなる。

まるで今にも泣き出してしまいそうな、そんなか細い声。


「雪夜、もう朝だよ」


なんだか怖くなって。

これ以上雪夜を見ていると、“忘れていた何か”を思い出してしまいそうで。


寝ているところ悪いけれど、彼を揺すって起こすことにした。


私は起き上がって何度か彼を揺すり、呼びかけるとようやく彼は目をゆっくりと開ける。



「おはよう、雪夜。
寝すぎだか……きゃっ」

目を覚ましたことに安心していると、突然雪夜が私の腕を引っ張ってきた。


バランスの崩した私は、勢いよく雪夜に倒れこむ。

かと思えば彼は私の背中に手をまわし、力強く抱きしめてきた。


「雪夜?」
「……せっかくよく寝れてたのに」

寝起きのせいか、声が掠れていた彼。
起こされたのが気に食わなかったらしく、不機嫌な様子。

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