危険な愛に侵されて。



「いつも寝る時間ないの?」
「いや、あるけど寝れねぇ」

「え?」
「寝てもすぐ目が覚める」


それは意外だった。
睡眠障害というものだろうか。


「だから久しぶり。最後にゆっくり寝れたのは……あ、確かあの日だな」


突然楽しそうな、陽気な声へと変わる雪夜。
それほど思い出がある日なのだろうか。

そう思っていると───


「白野とラブホ行った日だわ」

まさかの衝撃発言。


女とホテル行った日、というのならまだわかる。
けれど神田の彼女である、未央ちゃんとホテル…?


「え、もしかして略奪?」

「ちげぇよ。
色々あって、ふたりがすれ違った時」

「もしかして襲ったの?」

「そんなわけねぇだろ。
あいつは拓哉でも抱けねぇんだから」


神田も女扱いに慣れていそうな言い方。

確かに慣れているのだろうけれど、私は怖くて到底近づけない。


「だろうね。未央ちゃん、すごく純粋だし」

「ああ、だからラブホなのに“そういうムード”にすらならなくて、コンビニの飯食って寝ただけ。

おかしすぎて笑い止まんなかった」


どうやら今も思い出すと面白いらしく、小さく笑う雪夜。

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