危険な愛に侵されて。
「まあ立ち止まってるのもなんだし、早く行こうよ…!」
“表の自分”を演じ、満面の笑みを浮かべる。
ふたりは納得のいかない表情をしながらも、なんとか改札を通り歩き出してくれた。
「静、なんで俺に黙ってんだよ」
「別に言うことでもないかなーって」
「昨日、ちょっとは進展した仲なのに?」
照れてたくせに、と言いながら少し拗ねた様子の祐樹。
不覚にもかわいいと思ってしまう。
「いや、あれは本能的に仕方ないというか…不意打ちだったから」
「じゃあ同じことしたらもう感じない?」
「させません!」
甘ったるい。
こんな甘い祐樹に慣れない私は対処に困ってしまう。
けれど本人は私の反応を見てクスクス笑っているだけ。
意地悪な人間に挟まれてしまう私は、まるで精神が削られるようだ。
「えー、じゃあ今度俺の家来いよ。
“幼なじみ”として」
“幼なじみ”と強調する辺り、ずるい人間だ。
油断させようとしてくる。
けれど絶対家に行けば終わり。
今の祐樹のことだ、何事もなく終わるとは考えにくい。