危険な愛に侵されて。



けれど口を開こうとしない雪夜。
これだと祐樹に聞くのも難しそうだ。



「はいはい、どうせ私は除け者ですよーだ」
「そこまで言う必要ねぇだろ。たかがこんなことで」

「こんなことって何よ。祐樹は知ってるくせに」
「バカ、お前声でかい」


つい声が大きくなってしまい、出欠を取っていた先生に視線を向けられてしまう。

そこではっと我に返り、慌てて俯いた。


「ちっせぇことだから気にすんなよ」
「……気にするよ」


私の過去は知られているのに、雪夜の過去は知らないだなんて不服だ。



「まあ気楽にいこうぜ。
お前はただ俺のそばにいればいい」

「……ならどうして私をそばに置きたがるの」
「お前の隣は落ち着くから」

「……っ」


まさかストレートに答えられるとは思っておらず、戸惑ってしまう私。

ただそう答えた雪夜の表情は心なしか切なげに見えて───


いつもより雪夜が遠く感じた。

< 215 / 370 >

この作品をシェア

pagetop