危険な愛に侵されて。



けれど宮木さんが迎えに来てくれたら、もう雪夜と一緒にいられないと思うと寂しい。

ひとりにはさせないと言いながら、本人はそばにいてくれないだなんて。


「…………」

思わずぎゅっと雪夜の袖を掴む。


寂しい気持ちなんて今の私にはもう不必要だと思っていたのに、湧いてきてしまう。

まだ離れたくない。



「なんだよ、かわいいことして」
「……っ、なんでもない」

寂しいと言葉にできるはずがなく、首を横に振る。
けれど袖を掴む手は離すことができない。


「本当、素直じゃねぇな」
「な、何が……」


呆れる雪夜に対し、言い返そうとしたら袖を掴んでいた手を引き剥がされて。

かと思えばその手を握ってきた。


「こっちのほうがいいだろ」
「……っ、よ、良くない!」


たかが手を繋がれただけ。
それなのにドキドキしてしまう私は絶対に変だ。

顔が熱くなり思わず背けるけれど、雪夜に小さく笑われてしまう。

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