危険な愛に侵されて。



「恋人らしいことは慣れてねぇんだな」
「お、お互い様でしょ…!」


余裕な表情の雪夜に対し、照れてしまう私が本当に悔しくて。

思わずぎゅっと手を握りしめてやるけれど。


「ほら、痛いからやめろ」

優しく声をかけてきて、調子が狂ってしまう私。


「……うう、なんなのもう」


全部全部、雪夜の思い通りになっている自分。
わかっているのに抗えない。


「意外とコロコロ変わんのな、表情。
見ていて飽きねぇ」

「……見ないで」


プイッと反対側を向いてやるけれど、握られた手は決して離そうとしない私。

だからきっとバレているのだろう。


この寂しい気持ちも、恥ずかしいけれど抗えないことも全部。



「……あ、きた」

それから少しすると、いつもの黒い車が私たちの近くにある道路の端に停まった。


宮木さんは降りようとしたけれど、雪夜が手でそれを制して。

代わりに彼自身が運転席の後ろを開け、私をエスコートするかのように『どうぞ』と言ってきた。

< 223 / 370 >

この作品をシェア

pagetop