危険な愛に侵されて。
「恋人らしいことは慣れてねぇんだな」
「お、お互い様でしょ…!」
余裕な表情の雪夜に対し、照れてしまう私が本当に悔しくて。
思わずぎゅっと手を握りしめてやるけれど。
「ほら、痛いからやめろ」
優しく声をかけてきて、調子が狂ってしまう私。
「……うう、なんなのもう」
全部全部、雪夜の思い通りになっている自分。
わかっているのに抗えない。
「意外とコロコロ変わんのな、表情。
見ていて飽きねぇ」
「……見ないで」
プイッと反対側を向いてやるけれど、握られた手は決して離そうとしない私。
だからきっとバレているのだろう。
この寂しい気持ちも、恥ずかしいけれど抗えないことも全部。
「……あ、きた」
それから少しすると、いつもの黒い車が私たちの近くにある道路の端に停まった。
宮木さんは降りようとしたけれど、雪夜が手でそれを制して。
代わりに彼自身が運転席の後ろを開け、私をエスコートするかのように『どうぞ』と言ってきた。