危険な愛に侵されて。
「……ありがとう」
ここは素直に受け入れ、車に乗り込む私。
この後雪夜は任務があるため、恐らくこの車には乗り込まないだろう。
少し離れるのが惜しいと思うのは、私だけだろうか。
「なあ、御園」
その時雪夜が私の名前を呼んできた。
何か言われるのだろうと思い、雪夜のほうを向けば───
「な、に……んっ」
背もたれ部分に手を置き、私と唇を重ね合わせてきた。
触れるだけの優しいキス。
それなのに───
「じゃあ、また明日。
遅くなるだろうから先に寝とけよ」
余裕な笑みを浮かべた雪夜は、宮木さんに言葉をかけた後ドアをそっと閉めてきて。
雪夜より先に動き出した車。
顔が熱くなる中、ちらっと外にいる彼に視線を向ければ車が行くのを見届けてくれる様子で。
最後に視線が絡み合い、雪夜が微笑んだのを最後に私は視線を車内へと戻す。
「……っ」
触れるだけのキスだったというのに。
優しく重ねられた唇の感触が今も残っているようで、たまらなく胸がドキドキしてしまう。
慣れているはずなのに、その“慣れ”でさえも雪夜にかき乱される、そんな気がした。