危険な愛に侵されて。



それからすぐに雪夜の部屋に行き、着替える私。
一応部屋着ではなく、外へ行く用の服にした。

すっぴんだとどうかと思ったため、少しだけメイクをしてから居間へと向かう。


雪夜のお父さんとはいったいどんな人なのだろう。


その時ふと“すずくん”のお父さんが思い浮かんだ。



数回しか会ったことがないけれど、温厚な人だったと思う。

“すずくん”が相当懐いていたのだ。



「……ここだ」

ひとりで居間に行くのは初めてで、少し緊張する中。

居間に着くと襖の前にふたりの黒服姿の男が立っていた。


「御園様でしょうか」
「はい、そうです」

「お待ちしておりました」


私に気付くまでは鋭い目つきで周囲を警戒していたのに、私を視界に入れるなり優しい表情へと変わった。

やっぱり神田組は基本穏やかな人が多い気がする。
ただし心を許した相手に限るのだけれど。


「俊二(しゅんじ)さん、組長。
御園様がおいでです」


組長───?

組長もいることに少し違和感を覚えつつ、中から襖が開けられるのを待った。

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