危険な愛に侵されて。



組長と会うのも初めてではないため、特に身構えることもなく。


「……ということだから、涼雅の父親らしく行かないと」

「ははっ、俺が初めて拓哉の彼女と会った時は泣かせてしまったな」

「それは本当にバカだと思うぞ」
「拓哉にすごく怒られてしまってね、参ったよ」


すると何ということだろうか。

襖を開けられてもなお、居間に座っているふたりは盛り上がっていて私に気づいていない。


「俺はそんな失態しないからな。
涼雅の父親という威厳をだ…な……」


その時ようやく雪夜のお父さんらしき男の人が私の存在に気づいた。

けれど途端にピシッと固まってしまう。


「……なんと、すでに来ていたのか」

組長も私の姿を捉えるなり目を見張り、なんとも言えない空気へと変わる。


なんだか申し訳ないことをした気分だ。

ふたりは仲よさそうに話していたため、見た感じ同等に近い関係だということはわかった。


それに私の前では一人称が“私”である組長が、男の人の前では“俺”へと変わっていた。

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