危険な愛に侵されて。



「あ、あの…すみません」


とりあえず見てはいけないところを見てしまったため、頭を下げて謝る。



「いや、御園さんは悪くないから謝らなくていいよ」

けれど組長はそう言って優しい笑みを浮かた。
かと思えば突然立ち上がってしまい。


「それじゃあ私は退散させてもらおうかな。
居間にいる君たちもだよ。

ふたりのほうが話しやすいだろうから」


そのあとは一瞬だった。

組長だけでなく、居間にいた黒服姿の男たちも外に出たため、あっという間に固まる男の人とふたりになってしまう。


気まずい空気が漂う中、男の人がゴホンと咳払いをした。


「いやー、恥ずかしいところを見られてしまったな。
とりあえず座ろうか」


気を取り直したのか、男の人が目を細めて穏やかな笑みを浮かべたその時───



『いつも息子と遊んでくれてありがとう』

目の前の男の人と“すずくんのお父さん”が重なった気がした。

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