危険な愛に侵されて。
「よしっ、それじゃあ御園さん」
少しして冷静になった俊二さんが、改まった様子で私の名前を呼ぶ。
「は、はい」
「元々涼雅ことで話をするつもりだったんだが…少し掘り下げて話そうか」
ふと一瞬切なげに瞳が揺れた気がして、私も軽い気持ちで聞いてはいけないと思い話を聞く覚悟を決めた。
「何度も聞いて申し訳ないけど、涼雅が昔の幼なじみだったことは今知ったんだね?」
「……そうです」
ああ、やっぱり“すずくん”は雪夜だったんだと。
「じゃあそれに関しては受け入れてくれたのかな?」
「え…」
「昔の面影すらないだろう?」
「確かにない、ですね…」
“すずくん”は何かに怯えるような表情をよくしていた。
きっと母親だけでなく、周りの大人にも恐れていたのだろうと思う。
「でもたまに“すずくん”と重なるところがあって、なんとなく雪夜かなって思っていたのですが…どうしても名前が合わないなと思って…」
「名前?……ああ、君たちはお互いのことを少し特別な名で呼び合っていたからね」
特別な名?
どうしても思い出そうとしても思い出せず、モヤモヤする心。