危険な愛に侵されて。



「覚えてないのかな?俺も詳しくは知らないんだが、涼雅が嬉しそうにふたりだけの呼び名を決めたんだって言ってたのは覚えてる」


雪夜が嬉しそうに───


“涼雅”と“すずくん”
このふたつにどんな共通点があるのだろう。



「そんな涼雅の嬉しそうな表情見て、俺は“楽しい日々を送れているんだな”って思ってた」


俊二さんの声のトーンが変わる。
さっきよりも低く、暗くなったような気がして。

不意に脳裏を過ぎったのは、すずくんの体に残っていた痛々しい痣の数々。


「俺って本当父親失格だよ」
「……え」

「気づかなかったんだ、拓哉さんに言われるまで。
涼雅が暴力を振るわれてたってこと」


ドクンと心臓が嫌な音を立て、目を見張る。


───“拓哉”さん?


嫌な汗も流れ、言葉に詰まる中。
疑問が胸の中で膨れ上がる。


私の両親が、すずくんへの虐待をやめるようにきっかけを作ったはず。

それなのに拓哉さんとは、確か───


私と同い年の若頭である神田のことだろう。

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