危険な愛に侵されて。



「じゃああの後は…」

「また涼雅と妻がふたりで暮らし始めたよ。
引っ越ししたらしいが…」

「ど、どうして…どうしてすずくんと一緒に暮らさなかったんですか」


少し口調がきつくなるけれど。
私が俊二さんを責める資格などない。


「…身を隠すため」
「え……」

「ここの世界は危険だ。いつ命が狙われるかわからない。それを妻は重々承知していたから、涼雅を守るために別居することを決意した……実際妻にそう言われ、信じてしまった」


ぎゅっと俊二さんが自分の手を強く握り、拳を作る。


悔しそうで、苦しそうで。

それならどうして気づいてあげなかったんだという気持ちもあって。


「一度拓哉さんに言われた日に俺は妻と涼雅の住む家に向かった。鍵も渡されていたからね、迷わず中に入れば───」


思わず耳を塞ぎたくなるような。
想像するだけで泣きたくなるような。

過去に俊二さんが目にした状況を生々しく伝えられ、吐き気すら催すような気がした。

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