危険な愛に侵されて。







ひとりにしては大きい部屋の中にある、大きなベッド。

いつもは隣に雪夜がいるのに、今日はいないためさらに広く感じる。



あの後もいくつか俊二さんと話をして部屋に戻った私。

けれど雪夜は中々帰って来ず、夜の寝る時間になっても結局戻ってくることはなかった。


「……寝れない」

ぽつりと呟いた小さな声ですら部屋に響くような気がして。



脳裏に流れる過去の映像。
すずくんの笑顔に、怯えた表情。

引っ越してしまった後も彼はどれだけ怖い思いをしたのだろう。



時計の針が動く音しか聞こえない部屋で、ちらっと時間を確認すると午前2時を過ぎたところだった。


「……遅い」


何してるんだ。

先に寝とけと言われたけれど、それにしても遅すぎる───


その時、部屋の外から小さな足音が聞こえてきた気がした。



裏の世界はいつ、どこで狙われるかわからない。

些細な物音ひとつ聞き逃してはならないため、耳の聞こえはいい方だ。


そのためすぐ足音に気づいた私は目を閉じ、寝たふりをする。

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