危険な愛に侵されて。
*
ひとりにしては大きい部屋の中にある、大きなベッド。
いつもは隣に雪夜がいるのに、今日はいないためさらに広く感じる。
あの後もいくつか俊二さんと話をして部屋に戻った私。
けれど雪夜は中々帰って来ず、夜の寝る時間になっても結局戻ってくることはなかった。
「……寝れない」
ぽつりと呟いた小さな声ですら部屋に響くような気がして。
脳裏に流れる過去の映像。
すずくんの笑顔に、怯えた表情。
引っ越してしまった後も彼はどれだけ怖い思いをしたのだろう。
時計の針が動く音しか聞こえない部屋で、ちらっと時間を確認すると午前2時を過ぎたところだった。
「……遅い」
何してるんだ。
先に寝とけと言われたけれど、それにしても遅すぎる───
その時、部屋の外から小さな足音が聞こえてきた気がした。
裏の世界はいつ、どこで狙われるかわからない。
些細な物音ひとつ聞き逃してはならないため、耳の聞こえはいい方だ。
そのためすぐ足音に気づいた私は目を閉じ、寝たふりをする。