危険な愛に侵されて。



少しして、ガチャリとドアが開けられる。

暗闇の中で聞こえる音にドキドキと緊張する自分がいて。


「ちゃんと寝てる」

まるで“偉い”とでも褒めるかのように、雪夜の声が耳に届いた。


さらにその足音は近づいてきて、鼓動が速まるばかり。



そんな彼が私のすぐそばで止まった気がした。


落ち着け、自分。
少しでも動いたら寝たふりだとバレてしまうかもしれない。



「───おとちゃん」

ドクンと、心臓が大きく脈打った。


少し切なさの含まれた声で。
はっきりと私の名前を呼んだから。

それも───


幼い頃に呼び合っていた名前で。



雪夜の手が私の頬に触れる。
優しい手つき。

反応してしまいそうで、必死に我慢する。



「……ふっ、かわいい」

静かで落ち着いた低い声に、ドキドキと胸が高鳴り。
聞こえてしまうんじゃないかと不安になる。


それでも目を開けずに寝たふりを続けていると───


ほんの一瞬、唇に柔らかい感触がして。
どうやら雪夜にキスされたらしい。

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