危険な愛に侵されて。
「……わかりやすすぎだろ」
「ちが…もう早く行くから!」
最終的には半ギレの状態で雪夜の腕を引く。
この恥ずかしい状況から一刻も早く逃れたいのだ。
「そう焦るなって。会場に入れば挨拶回り地獄だぞ。
まだ拓哉は来なさそうだし」
「今のこの状況よりずっとマシ!」
「はいはい、わかったから落ち着け」
私たちは招待された側ではないため、玄関先の受付を通り過ぎて会場に移動した。
「……あっ、雪夜さんが来た!」
中に入るなり、すでに来ている招待客たちの視線を浴び。
途端に周囲が騒がしくなる。
明らかに私たちより歳上の人たちの多くが目を輝かせ、私たちに近寄ってきた。
やっぱり雪夜もすごい人なんだと思い知らされる中。
「涼雅さん、お久しぶりです」
「ああ、坂城(さかき)さん。お久しぶりです」
坂城さんと呼ばれる40代後半であろう男の人が、すぐそばまでやってきた。
雪夜が敬語を使うということは、そこそこ位の高い人なのか。
それとも───
神田組が主催するここでは、年上を敬うフリをしているのだろうか。