危険な愛に侵されて。



そこでまた騒がしくなる周囲。


「やはりそうでしたか…!すごく綺麗なお方ですね。涼雅さんととてもお似合いです」

「いえ、涼雅さんは私にはもったいないくらい素敵な人で…」


本当はど変態で意地の悪い人間だけれど。
ここは株上げのため、良い人間を取り繕う。


「婚約者、か…」

すると突然、雪夜がボソッと小さく呟いたかと思うと。


私と同じように笑みを浮かべた。
それも、周りを魅了するような笑みで。



「静音さんはとても素敵な女性ですね。
このような人を婚約者にできて幸せです」


平然と私の嘘に合わせる雪夜。
その表情はなぜか楽しそうだ。

それから始まる挨拶まわり。


婚約者だと宣言してしまったせいで、私も招待客たちとの会話に入ることになったけれど。

嘘の笑顔や言葉は苦手じゃない。
むしろ得意だ。


平気で嘘をつけるし幸せなフリだってできる。


それからも順番に挨拶をされ、にこにこと作り笑いを浮かべていると───


また周囲が騒がしくなり。

ようやくパーティーの主役であろうふたりがやって来たのだ。

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