危険な愛に侵されて。
「未央ちゃん、大丈夫?」
「へ?」
「疲れてない?」
あれだけ挨拶まわりをしたのだ、疲れて当然だろうと思ったけれど。
「ううん、大丈夫だよ!
緊張が解けて少し楽になったや」
ニコッと笑顔を浮かべる彼女はちっとも疲れているように見えない。
それほど緊張していたのだろうか。
「でも、すごいね…神田くんも涼雅くんも」
ちらっとふたりに視線を向ければ、堂々と前で立っていて。
参加者の多くが目を輝かせ、ふたりに視線を向けていた。
「そうだね」
まるで高校生には見えない。
「私も静音ちゃんみたいに堂々とできたらいいな…」
「え?」
「……あっ」
私が聞き返そうとすれば、突然彼女はふるふると首を横に振った。
「未央ちゃん…?」
「弱音吐かないって神田くんと約束したの。神田くんの彼女として、堂々とできるように頑張るんだ!」
ペチペチと自分の頬を軽く叩き、気合いを入れ直す様子の未央ちゃんは眩しいくらいに純粋な心で溢れていた。