危険な愛に侵されて。



パッと未央ちゃんが驚いた様子で振り向いたかと思うと、男が舌打ちして。



「どけ、この手邪魔なんだよ」

仮にも未成年の私に、何のためらいもなく腕を振り上げ殴ろうとしてきた。


これはもう対抗していいだろうと思った私は相手の足を引っ掛ける。


正面衝突だと当然負けてしまうのだから、どうしたら勝てるのかを考えなければならない。

男は殴りかかることに集中し、上半身に力を込めていたため。



簡単にバランスを崩したのをいいことに、相手の片腕をがっちり掴んで全身を床に押し付けた。

思った以上に勢いがあったようで、大きな音が会場に響く。



うつ伏せ状態の男は痛いのか、呻き声を上げた。



「御園!」

その時、雪夜の叫び声が聞こえたためはっと後ろを振り向けば、もうひとり男が殴りかかろうとしてきて。


急いで相手の溝に向かって足を蹴り上げる。


見事に命中し、男がよろけている間に立ち上がった私はその男の後ろに回ってナイフを取り出した。

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