危険な愛に侵されて。
「へぇ。じゃあ続きはまた後でな?」
ニヤリと口角を上げて笑う彼。
悔しい、本当に悔しくてたまらない。
やっぱり彼には敵わないだなんて信じたくない。
するりと私のスカートから手を出した彼は、律儀にも乱れたスカートを直してきた。
ここで紳士を出されても腹が立つだけ。
「───絶対に奪ってやる」
その命、私が必ず。
少しの油断も見逃さない。
その傷ひとつ知らないであろう体を、心を。
痛めつけ、そして苦しめてやる。
「なら俺も奪ってやるよ」
なるべく殺気を抑えようと思い、平静を装うけれど。
やはり彼には気づかれてしまう。
「お前の心も体も全部奪って後悔させてやるから」
彼にしては真剣な声音。
いつものような憎たらしい言い方ではない。
どうやら標的にされたようだ。
後悔とは恐らく、“殺そうとしたこと”に対してのことだろう。
「絶対に奪われないから」
体は好き放題にさせられたとしても、心は絶対に奪われないと誓った。