危険な愛に侵されて。



雪夜は、一体何して───


気づけば手先が震えている。
雪夜は全てを覚悟したような目をしていて。

その瞳に光は宿っていない。


そう。
雪夜がタンスから取り出したのは間違い無く───


黒く艶のある拳銃だった。


「ば、かじゃないの…?
そんなことしてあんた、タダで済むと……」

「最悪殺されるだろうな」
「は…」

「けど隙をついてお前を逃がすくらいなら、今の弱い俺にだってできる」



まるで死を覚悟したような言い方。
それは本気で言っているのだろうか。


「まあなるべく平穏に終わらせてぇから、使いたくないのが正直なところだけど…最悪の手段として」


とりあえず着替えて来いと雪夜は言い、綺麗に畳まれた部屋着を渡された。



「ねぇ、ゆきや…」
「一番はお前と生きていくことだから」

「……っ」
「少なくとも俺はそう思ってる」


馬鹿みたいだ。
私のために、そんな命を投げるような言い方をして。

私を守ったところで、庇ったところで。
一体雪夜になんの利益があるというのだ。

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