危険な愛に侵されて。



雪夜の言葉に素直な返事をすることができず、服を受け取って部屋を後にする。

メイクも落とせとのことだから、一階の洗面所に向かうことにした。



「…………」

その間にも多くの男たちから視線を感じ、見張られているのだということがわかる。


つまり、だ。

雪夜が神田に銃を突きつけた瞬間、敵と判断され黒服男たちに命を狙われることとなるのだ。


勝ち目のない戦いに挑もうとする雪夜。
どうやら考える能力が低下しているらしい。

このままでは本当に命の危険だってある。


まだ組長や俊二さんがいるのなら、なんとかなったかもしれないけれど。

ふたりがいない状況で、一番トップに君臨するのは他でもない若頭の神田拓哉なのだ。


雪夜を自ら危険な目に遭おうとしてほしくない。
やっと手に入れた自由、強い権力に肉体的な強い力。

これまで辛い思いをたくさんしてきた分、もう平和に過ごして欲しくて───



服を着替え、すっぴんになり。
“高校生姿”の私へと戻る。

その時にはもう覚悟は決めていた。



「……宮木さん」

階段付近で見張りをしていたのか、穏やかな雰囲気で立っている宮木さんに私は迷わず声をかける。

< 298 / 370 >

この作品をシェア

pagetop