危険な愛に侵されて。
雪夜の言葉に素直な返事をすることができず、服を受け取って部屋を後にする。
メイクも落とせとのことだから、一階の洗面所に向かうことにした。
「…………」
その間にも多くの男たちから視線を感じ、見張られているのだということがわかる。
つまり、だ。
雪夜が神田に銃を突きつけた瞬間、敵と判断され黒服男たちに命を狙われることとなるのだ。
勝ち目のない戦いに挑もうとする雪夜。
どうやら考える能力が低下しているらしい。
このままでは本当に命の危険だってある。
まだ組長や俊二さんがいるのなら、なんとかなったかもしれないけれど。
ふたりがいない状況で、一番トップに君臨するのは他でもない若頭の神田拓哉なのだ。
雪夜を自ら危険な目に遭おうとしてほしくない。
やっと手に入れた自由、強い権力に肉体的な強い力。
これまで辛い思いをたくさんしてきた分、もう平和に過ごして欲しくて───
服を着替え、すっぴんになり。
“高校生姿”の私へと戻る。
その時にはもう覚悟は決めていた。
「……宮木さん」
階段付近で見張りをしていたのか、穏やかな雰囲気で立っている宮木さんに私は迷わず声をかける。