危険な愛に侵されて。



「御園様、どうなさいましたか?」
「神田はもう直ぐ来ますか」

「ああ、恐らく来るかと。今は確保した敵と同じ車に乗ってこちらに向かっているようです」

「……じゃあここで待ってますね」


階段近くの壁に背をつけ、もたれる体勢へと変える。



「おや、もしや自分から申し出ると?」
「……はい。平和に行きたいので」

「御園様も雪夜様も、優しいお方ですね」


ふと今の宮木さんの言葉に違和感を覚えた。
さっきは“弱い”とはっきり言い切っていたのに。

今は“優しい”という言葉。
嘘をついているようには見えない。


ならどうして雪夜の前で言わなかったのか───


「……怒っていますか」
「え?」

「先ほど雪夜様を下に見る発言をしてしまいました」


どうやら本人はわかっていてそれを言ったらしい。
けれど目的がわからなくて返答に戸惑ってしまう。


「えっと、それは…なぜですか」
「雪夜様は過去に縛られておいでです」

目を細め、少し寂しげな瞳へと変わる。

< 299 / 370 >

この作品をシェア

pagetop