危険な愛に侵されて。
「御園様、どうなさいましたか?」
「神田はもう直ぐ来ますか」
「ああ、恐らく来るかと。今は確保した敵と同じ車に乗ってこちらに向かっているようです」
「……じゃあここで待ってますね」
階段近くの壁に背をつけ、もたれる体勢へと変える。
「おや、もしや自分から申し出ると?」
「……はい。平和に行きたいので」
「御園様も雪夜様も、優しいお方ですね」
ふと今の宮木さんの言葉に違和感を覚えた。
さっきは“弱い”とはっきり言い切っていたのに。
今は“優しい”という言葉。
嘘をついているようには見えない。
ならどうして雪夜の前で言わなかったのか───
「……怒っていますか」
「え?」
「先ほど雪夜様を下に見る発言をしてしまいました」
どうやら本人はわかっていてそれを言ったらしい。
けれど目的がわからなくて返答に戸惑ってしまう。
「えっと、それは…なぜですか」
「雪夜様は過去に縛られておいでです」
目を細め、少し寂しげな瞳へと変わる。