危険な愛に侵されて。



「しかし御園様と出会ったことにより、雪夜様はより鮮明に過去を思い出すようになりました。

ですがそれは良い意味でございましょう」


今度は私に視線を移し、穏やかな笑みを浮かべた。



「御園様がそばにいることで、雪夜様は過去を乗り越えようとしていらっしゃる。

このまま過去に縛られたままでは、一向に強くならない。今の雪夜様は偽りの強さです。本当の強さは過去の縛りを解き放たない限り、手に入れることができません」



どうやら私は誤解していたらしい。

宮木さんに対して“狂気”と思ったことを訂正したいと思った。



「雪夜様が一番人間らしい。もしかしたら神田組の中で一番優しさのある人かもしれません。

ですが優しさだけではこの世界を生きていけない……雪夜様はまだ強くなれます。それこそ先ほど申し上げたように、神田様と肩を並べられるほど」


一度、ゆっくりと瞬きをした後。
宮木さんはまた私と視線を合わせた。

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