危険な愛に侵されて。



「そのためには“精神的な強さ”が必要です。けれど雪夜様は先ほど、御園様と逃げる道を選ぼうとした」

「……っ」


「それには非常に残念でした。
背中を見せて逃げるなど、負けを認めたのも同然。

簡単に神田様に見抜かれてしまいました」


少しずつ、宮木さんの本心が見えてきた。

確かに雪夜の位は高い。
それなのに逃げる選択をするのはどうかと思う。


だから宮木さんは───


「恐らく雪夜様は、覚悟を決めたことでしょう。
神田様と戦う覚悟が」

「じゃあ宮木さんは、わざと…」


「あるひとつのことで感情が乱され、狂気と化すほど美しいものはありません。

ああ、私の言葉で雪夜様が化けたなら、それはそれで嬉しいことです…さらなる強さを手に入れることでしょう」


前言撤回。

うっとりとした宮木さんを見て、やはり体がゾクッと震えた。


宮木さんはわざと。
雪夜に逃げる以外の選択を取らせるため。

期待を込めて、あの見下したような言い方をしたのだ。

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