危険な愛に侵されて。




「……そういえば、私。
涼雅からちゃんと好きって言われてない」

「は?今言うかよそれ」
「結構大事な事項!」


じっと涼雅を見つめる。

少し動けばキスできそうな距離で、涼雅が降参したのかため息をついた。


「案外わがままだな」
「そんな私は嫌い?」


わざと“好き”と言いやすい状況を作り。
涼雅の言葉を待つ。


「───いいや、もうどうしようもねぇくらい静音が好きだ」

たまらない。
言葉にされるのも、その真剣な瞳も。


その後の少し恥ずかしそうな表情だって全部。
私は涼雅の虜である。


「うん、私も涼雅が好きすぎておかしくなりそう」

やっと掴んだ幸せ。
もう阻むものはない。


「まだ足りねぇな」
「え…」

「もっと俺のことで狂えばいい」



ああ、危険だ。

目の前の男は本当に危険。
野性的で、誰よりも欲深いかもしれない……なんて。

私だって人のことは言えないけれど。


理性を欠いた涼雅がゆっくりと近づいてきて。
迷わず受け入れるように私は目を閉じる。

そして───



重なり合った唇。
そのキスは、とびきり甘くて優しい。

そんな気がした。






END





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