危険な愛に侵されて。
事実
私が目を覚ました部屋が、どうやら雪夜の部屋だったらしく。
また同じ場所へと戻ってきた。
扉が閉められ、完全にふたりきりになったところでよくやく恐怖心が消えたのか、力が抜けて雪夜にもたれかかる。
「おい、大丈夫か?」
「……ごめん」
謝るけれど起き上がる気力はない。
どうやら私は、それほどに怯えていたようだ。
“神田くん”と呼ばれていた男に───
「あの男…何者なの」
たったひとりの人間に、これほど怯える日が来るとは思わなかった。
静かで真面目そうな見た目とは違い、圧を感じる危険な姿。
「拓哉(たくや)は若頭」
「……え」
「さっきの男の話。
神田組の若頭、神田拓哉」
「その人、何歳なの?」
「俺らと同い年」
ありえないと素直に思った。
その若さでヤクザの二番目を引き継いでいるというの?
「考えられねぇだろ」
「……まだ高校生でしょ?」
「お前と一緒で高校生には見えねぇからな」
「老け顔で悪かったわね」
神田拓也という人物の話をしているというのに、私をバカにするような言葉も交えてくる彼。