運命の恋~もしもあの時・・~
私は折り返しの電話をするために画面をタップしていた。
誰とも話したくなかったのに稗田さんの声が聞きたかった。

『はい。稗田です。電話ありがとう。』

穏やかな稗田さんの声が聞こえてまた涙がでる。

「おはようございます。どうされたんですか?」

泣いていることを気づかれないように落ち着いて話す。

『元気かな?実は昨晩お友達の神田さんに偶然お会いしてね、香織ちゃん元気か尋ねてみたらあまり連絡が取れないって心配してたよ。田邉も同じようなこと言ってたから。何かあった?』

「稗田さんお忙しいのに私なんかのことまで気にかけて下さってありがとうございます。う~ん、現実逃避とかとはまた違ってただ何もかも投げ出さないように生きることに集中してました。ハハッ。」

冗談っぽく、重たくならないように言ってみた。

『私なんかってひどいなぁ~、俺は香織ちゃんが気になってたまらないけどなぁ。でもしつこいと嫌われるから香織ちゃんからのお誘い待ってたのに。』

稗田さんも冗談っぽく返してくれる。
本当に優しくて面倒見のいい人なんだろうな。
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