運命の恋~もしもあの時・・~
稗田さんの右手が私の背をなでる。
心臓がよりいっそう速くなる気がする。
そして稗田さんが左手で私の頬を撫でたとき…
不意に唇が離された。

一瞬驚いた顔をしたけどすぐに困ったように笑う。
そして両手で私の頬を包んでおでこをこつっと当てられる。

「はぁ、本当に君ってヤツは…罪深い人だ。」

「えっ?私変ですか?」

よく意味がわからない。
そんなに男性経験ないから変なことしちゃったかな?

「次こそは本当に逃がさないからね。部屋に入った時点で逃がすつもりなかったのに…はぁ…」

「なんで?なんで逃がすの?逃がさないでよ…」

思わず縋るように大胆なことを言ってしまった…

「泣いてる子を押し倒す趣味はないよ。」

そう言ってチュッとキスして稗田さんは私から離れた。

「座って待ってて、水しかないけど持ってくるよ。」

そう言って背をむけキッチンのほうに歩いていくから慌てて背中に抱きついた。
若い子がするなら可愛いけど私がすると惨めに縋るようでまた涙が出た。

「こらこら、俺にも理性の限界っていうものがあるからね、離して。」

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