運命の恋~もしもあの時・・~
「稗田さん、人たらしですよね。そんな事さらっと言うなんて。勘違いする人もいますよ。」

照れを隠すためにプイッと向く。

「え~、ひどいなぁ。俺はいつだって思った事しか言ってないし、好きだから隙さえあれば全力で口説くよ。」

ドヤ顔の笑顔でこちらを見る。

「口説くって…もう私なんかに構ってないで若くて可愛い子を口説かないと。時間がもったいないよ。」

心がチクッとする。
私は夫も子どももいて傷つく権利はないのに。

「はぁ、まぁいいよ。今すぐ落とせると思ってないし。香織ちゃんはまずご主人のことを解決しないといけないからね。待つよ。」

待つって…
どこまで本気で言ってるんだろう…

「フフッ相変わらず稗田さんは稗田さんですね。でも話してると元気が出ます。夏川くんにも宜しく伝えて下さい。有希の家、そこなんでもう戻ってください。ありがとうございました。」

深々とおじぎをしてから顔を上げると稗田さんの顔が驚くほど近くにあった。

「どこまで伝わってるんだろうね…友達の家の近くとかじゃなければまたねのキスするのに。」

わざと落胆した顔をして離れていく。

「またね。会えて嬉しかったよ。」

そうして手を振り来た道を戻っていく。
< 163 / 316 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop